第2話:急襲
あらすじ:記憶を失くした男、朝霧 雫は、中世ヨーロッパのような見慣れぬ光景を前に、呆然と立ち尽くしていた。その時、茂みの奥から、女の悲鳴が響く。その先で待っていたのは……
※記事公開日2019年8月17日(記事更新日2019年11月24日)
LANCASTER《ランカスター》とは
ある日、現代からタイムスリップしたひとりの男。
目が覚めると、そこは中世暗黒時代、百年戦争の地だった。
再び生きて現代に戻る条件はただ一つ。
あらゆる願いを叶える《奇蹟の円環》を手に入れる事──
生死を賭した中世ダークファンタジー剣戟譚、開幕!!
LANCASTER《ランカスター》第2話:急襲
悲鳴が聞こえたのは、こっちの方のはずだ
こ、これは……
酷い火事だ……
ハァ……ハァ…………
生存者か……? おい、大丈夫か
わ、私は大丈夫です……この通り、少し怪我をしただけです……
(深い傷ではなさそうだ)
それより早く逃げて下さい
逃げる……? いったい何が起きているんだ
賊です……野盗が村に火を放ったのです
賊だと……
とにかく、ここから離れて、人目のない山中へ逃げましょう
私はオークリー村の薬師ココットです。山には普段から薬草を摘みに入っているので、道中の案内なら任せて下さい
分かった。だが、ここを離れた後でゆっくり話を聞かせてくれないか
分かりました。それでは、急ぎますよ───
分かれ道だ。どっちに行けばいい
右です。その先に身を隠すための岩戸があります。賊が退くまで、そこにしばらく身を隠しましょう
ああ、分かった……
心配は要りません。平地の人間には見つけっこありません。それに──
薬草を受け取りに、もうすぐランカスター隊長がこの村に来てくれます。この騒ぎを知れば、きっと賊共を鎮圧してくれるはずです
ランカスター隊長……?
ええ。王より《斬り裂く者たち》を意味する"ゲオルグ"の爵位を賜りし総勢24の剣士。通称【拝命二十四騎士長】から成る最強の剣術組織《ウィンザー騎士団》──
その第24部隊隊長を務める騎士長"マルグリッド・オブ・ランカスター" その人の事です。私が知る限り、このイングランド王国で彼女ほど強い騎士はいません
イングランド王国……?
何かおかしな事を言いましたか……? それより、そろそろ岩戸に着───
カハッ───!!!
…………!
残念だったなぁ。村を出た時から、この娘の後を付けていたのさ
村を襲う時は、あえて何人か逃がしてやるんだよ。そうすると決まって、隠した私財を取りに行くんだよなぁ
そんな理由で……
安心しろよ。今からお前もあの世に行かせてやるからよッ───
グハッ……一瞬で俺の剣を奪うとは……な、何者だ、お前……
(なぜ、俺はこんなに動けるんだ……俺は一体)
それにこれはなんだ……………急に視界がボヤけて……
カチッカチッカチッ──