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『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』から学ぶ物語の作り方【後編】

「SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術」から学ぶ物語の作り方【後編】

概要:今回も引き続き、米Amazon脚本術部門で売上No.1のベストセラー『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』から、物語の作り方について学ぶ記事【後編】となります。

 

 

こんにちは、綾崎あやめです。

ゲームデザイナーとして4年間ほどテキスト制作等の業務をしています。

 

 

あなたの物語は、読者を惹きつけられる物語になっていますか?

この記事を読んだ後は、あなたの物語は今より面白い物語になります。 

 

当記事は、以下書籍『SAVE THE CAT 本当に売れる脚本術』の要約記事となります。

 

 

前編の記事はこちら。


 

 

 

 

面白い物語を作るために必要となる15の要素

 

結論から言うと、面白い物語を作るためには15個の要素があるぜ、という話です。

 

ハリウッドで最も成功した脚本家であるブレイク・スナイダーは、

今までの脚本術の構成について以下のように批判しました。

 

 

三幕構成だけじゃ充分じゃなかった。だだっ広い海で泳ぐのと同じで、

幕と幕の間が広すぎて、途中で迷ってパニックに陥り溺れてしまうのだ。

SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』より引用

 

 

三幕構成とは、簡単に言うと、こんな感じです。

 

・1979年にアメリカの脚本家シド・フィールドによって理論化された構成のこと

・物語は、三つの幕に分けられる(設定、対立、解決)

・三つの幕の比は、1:2:1(=物語の黄金比)

映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術』より引用

 

 

ブレイク・スナイダーは、このように三幕構成には抜けがあるとして、

ブレイク・スナイダー・ビート・シートと呼ばれる独自の脚本術をまとめました。

 

 

ブレイク・スナイダー・ビート・シートの内容は、以下の通りです。

 

 

~面白い物語を作るために必要となる15の要素~

  

物語の要素1:オープニング・イメージ

物語の要素2:テーマの提示

物語の要素3:セットアップ

物語の要素4:きっかけ

物語の要素5:悩みのとき

物語の要素6:第一ターニング・ポイント

物語の要素7:サブプロット

物語の要素8:お楽しみ

物語の要素9:ミッド・ポイント

物語の要素10:迫りくる悪い奴ら

物語の要素11:すべてを失って

物語の要素12:心の暗闇

物語の要素13:第二ターニング・ポイント

物語の要素14:フィナーレ

物語の要素15:ファイナルイメージ

 

 SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』より引用

 

 

 

要素だけを見ても、よく分からないと思います。

なので、ここでは、一旦このように理解して下さい。

 

面白い物語を作るためには15個の要素がある

 

 

それでは、以下、個別具体的に説明していきます。

 

 

 

 

 

物語の構成1:オープニング・イメージ

 

 

オープニング・イメージとは、主人公の出発地点、主人公の《変化前》を見せる場面のこと。

つまり、この場面を通して、観客にこれから一緒に旅をする主人公の《変化前》を見せます。

 

 

オープニング・イメージについてより深く理解するために、以下に具体例を紹介します。

尚、本書では、具体例として挙げられていた作品が古くてイメージし辛かったため、

多くの日本人に馴染み深い映画『千と千尋の神隠し』で解説させて下さい。

  

 

 

~『千と千尋の神隠し』におけるオープニング・イメージ~

 

出発地点:現代

変化前の主人公:転向先となる新しい学校に興味ないと愚痴をこぼす

 

変化前の主人公は、新しい環境の中に一歩ふみ出せない大人になれない少女

 

 

 

 

ここでは、千尋は、新しい環境に飛び込まなければならない状態にいることが分かります。

しかし、千尋は、新しい環境に飛び込みたくない、と自己変容・成長を恐れます。

 

 

つまり、この物語は、大人として成長しきれない少女の成長を描く物語だと分かります。

このように、オープニング・イメージとは、主人公の《変化前》を見せる場面になります。

 

 

 

ワンポイント~物語の基本とは~

 

ストーリーメーカー 創作のための物語論によれば、

"物語の基本は、何かが欠けている主人公がその欠けた何かを探す"だと言います。

つまり、欠如⇒回復という構造こそ、物語の基本になるということです。

 

 

例えば、千尋は、大人になるために必要な自立心・行動力が欠けています。

だからこそ、その欠けたものを探すために、トンネルを抜けて旅に出る訳です。

 

 

 

 

 

 

物語の構成2:テーマの提示

 

テーマとは、その物語で伝えたい主張のことです。

例えば、こんな感じ。

 

 

こんな人生ってどう思う?

こんな行動、夢、目標には価値があるだろうか?

組織で優先されるべきは個人だろうか、組織だろうか?

 

 

このように、テーマとは、物語を通じて、

見た人にどんなことを伝えたいのかという主張になります。

 

 

ブレイク・スナイダーによれば、優れた脚本は、冒頭から5分以内に

以下のようなテーマの提示の仕方をします。

 

 

 

 

登場人物の誰かが問題を提起したり、テーマに関連したことを口にしたりする

(「よく考えて行動しなさい」とか「奢れるものは久しからず」とか)

 

 

 

 

 

『千と千尋の神隠し』の冒頭では、ハクを通じて、以下のテーマ提示をしていました。

 

 

ここを支配している魔女だ。嫌だとか、帰りたいとか言わせるように仕向けてくるけど、働きたいとだけ言うんだ。辛くても、耐えて機会を待つんだよ。

『千と千尋の神隠し』より引用

 

 

つまり、大人になるためには我慢も必要だ、ということを言っています。

この世界では、もう今までの弱音は通じません。

千尋は、大人として成長するために、試されているという訳です。

 

 

 

 

 

 

 

物語の構成3:セットアップ

 

セットアップとは、読み手が関心を持つか失くすかの境目となる場面のことです。

つまり、読者の興味関心を引く場面となります。

 

 

ブレイク・スナイダーによれば、読者に興味関心を持たせるためには、

主人公に欠けているものについてしっかり見せる必要があります。

 

 

つまり、先ほど『ストーリーメーカー 創作のための物語論』にて説明した通り、

セットアップでは、物語の基本(欠如⇒回復)について提示する場面となります。

 

 

例えば、こんな感じです。

 

 

 

~『千と千尋の神隠し』におけるセットアップ~

 

千尋に欠けているもの:大人になるために必要な自立心・行動力

千尋が探さなければならないもの:親のいない世界で自立して行動する力

 

 

 

このように、主人公の欠けたものについてしっかり見せることで、

読者の興味関心を引くことができます。

 

この主人公は、いったい、なぜ、こういう性格なってしまったんだろうとか。

この主人公は、これからどういうふうに変わっていくんだろうかとか。

欠けているからこそ、その先が知りたくなる訳です。

 

 

以上、ここまでが物語の冒頭部分の構成となります。

 

 

 

 

 

 

物語の構成4:きっかけ

 

きっかけとは、人生を変えるような場面のことです。

つまり、主人公は、今までの日常を変えてくれるような人物・出来事に出会います。

 

 

例えば、こんな感じです。

 

 

 

・千尋は、あちら側の世界の橋渡し役となるハクに出会う

・千尋は、 ハクに出会うことで、人生が大きく変わる

 

 

 

このように、きっかけのフェーズでは、

主人公は、それまでの日常を大きく変えてくれる人、物、出来事に出会います。

 

物語は、このきっかけを通じて、動き出します。

 

 

 

 

 

 

物語の構成5:悩みのとき

 

悩みのときとは、主人公が何かしらの疑問を抱く場面となります。

つまり、主人公は、疑問を抱き、その疑問に答えを出すことで、

初めて自信を持って前に進む、という場面となります。

 

 

主人公に共感して貰えるかどうかは、この悩みのときが重要になります。

なぜなら、僕たち私たちも主人公と同じように色々な悩みを持っているからです。

 

例えば、思春期の時に、好きな人がいるけど、想いが伝えられないと悩んだりとか。

就職の時に、いったい自分は何をしたいんだろうと悩んだりとか。

 

 

このように、僕たち私たちは、主人公と同じような悩みを持っているからこそ、

同じような悩みを抱えながらも前進しようとする主人公の姿に共感する訳です。

 

 

ちなみに、 『千と千尋の神隠し』では、こんな感じで悩みのときを描いていました。

 

 

 

・千尋は、橋を前にして、あちら側の世界に行くことを躊躇して立ち止まる

・理由は、変化すること、新しい環境に飛び込むことが怖いから

・千尋は、この悩みの時を経て、遂に橋を渡って、あちら側の世界に踏み出す

 

千尋に共感できるのは、僕たちもまた変化することを怖いと思うから。

 だからこそ、共感して、思わず、主人公の背を押してあげたくなる訳です。

 

 

 

 

 

 

物語の構成6:第一ターニングポイント

 

第一ターニング・ポイントとは、古い世界を出て、正反対の世界に進む場面のことです。

つまり、主人公は、もう、日常の世界にはいられなくなります。

 

 

例えば、 千尋は、今までの現実世界から離れて、湯婆婆の下で働くことになります。

 

 

ここで重要なのは

 

 

 

主人公は、自らの意志で出発しなければならないということです。

たとえ、人に背中を押されるような形であったとしても、

最終的に「出発する」ということを決めるのは、主人公でなければなりません。

なぜなら、共感は、自らの意志と行動からのみ生まれるからです。

 

 

 

千尋は、この悩みのときを経て、最終的に自分の意志で、あちら側の世界に行きます。

 

このように、第一ターニング・ポイントのフェーズでは、

主人公は、自分の意志によって、日常の世界に別れを告げ、非日常の世界へ踏み出します。

 

 

 

 

 

 

物語の構成7:サブプロット

 

サブプロットとは、ちょっとした息抜きとなる場面のことです。

つまり、第一ターニング・ポイントの後の衝撃を和らげるための場面転換となる部分になります。

 

 

例えば、

 

 

 

千尋は、最初の試練となる「湯婆婆との出会い」という緊張する場面を経た後、

それまでの緊迫した内容とは打って変わって、

リン、番台蛙など湯所で働く人たちとの交流を描いた場面に転換しています。

 

 

 

このように、息抜きとなる場面を用意することで、読者は一息をつくことができます。

そして、次の重要となる物語に向けて準備できる訳です。

 

 

 

 

 

 

物語の構成8:お楽しみ

 

お楽しみとは、読者に対するお約束を果たす場面となります。

つまり、読者がいちばん見たがっていた場面となります。

 

 

ここでは、ポスターや予告編で使っていた一番おいしい部分を見せます。

読者は、物語の進展以上に、このお楽しみを期待しています。

 

 

例えば、こんな感じです。

映画『スパイダーマン』にて、とつぜん身についた不思議なパワーを試してみる場面

映画『ダイ・ハード』にて、テロリストを出し抜く場面

 

 

こんな感じで、この時はこうなるだろう、というお約束の展開を見せる場面となります。

読者は、こうしたテンプレを見ると、このあとも安心して物語を見ることができます。

 

 

ちなみに、『千と千尋の神隠し』では、こんな感じの見せ方をしていました。

 

 

・坊の部屋に入ってしまった千尋は、湯婆婆から隠れるため、クッションの下に隠れる

・湯婆婆が部屋から離れた隙に逃げ出そうとする千尋

・坊に見つかり、捕まってしまう千尋

・坊は「遊んでくれないと泣いちゃうぞ」「泣いたらすぐに婆が来るぞ」と脅しを掛ける

・銭婆がどこからともなく現れて、魔法で坊をネズミに変えてしまう

・千尋は、結果として、まんまと意地悪な湯婆婆と坊を出し抜く

 

この意地悪な湯婆婆や坊を出し抜く部分こそ、お楽しみになります

 

 

 

 

 

 

 

物語の構成9:ミッドポイント

 

ミッドポイントとは、主人公が一時的に絶好調(絶不調)になる場面のことです。

ここで重要なのは、どちらも見せかけの絶好調(絶不調)になるという点です。

 

 

例えば、こんな感じです。

 

 

 

・千尋がカオナシを湯所に招いてしまったせいで、暴走したカオナシに湯所が壊されてしまう

・そのうえ、千尋は、仕事を捨て、銭婆の所へ行ってしまう

・湯婆婆は、怒り狂い、豚になった千尋の両親を「ベーコンにしてしまえ」と言う

 

まさに千尋の大ピンチ(見せかけ)となります

 

 

 

しかし、実際は、千尋はピンチの状態にはありません。

むしろ千尋は、銭婆と会うことで、命の恩人であるハクを助けることができます。

 

それにより、本当の名前を思い出したハクは、白竜に姿を変えます。

そして、千尋は、白竜になったハクにまたがり、湯婆婆の所へ向かう訳です。

 

 

 

このように、いちど見せかけの絶好調(絶不調)を見せることで、

山場に向けて緩急を作ることができます。

 

この緩急があるからこそ、山場が盛り上がる訳です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

物語の構成10:迫りくる悪いヤツ

 

迫りくる悪いヤツとは、絶好調に見える主人公に対して、敵側が総攻撃をしようとする場面です。

湯婆婆は、湯所に戻って来た好調な千尋の目の前に豚を並べて、こう言い放ちます。

 

 

この中からおまえのお父さんとお母さんを見つけな。

チャンスは一回だ。ピタリと当てられたらおまえたちゃ自由だよ

『千と千尋の神隠し』より引用

 

 

千尋は、こうして、湯婆婆から最後の試練を受けます。

 

このように、迫りくる悪いヤツでは、絶好調に見える主人公に対して、

敵側が最後の攻撃を加えてきます

 

 

 

 

 

 

物語の構成11:すべてを失って

 

すべてを失ってとは、死の気配を見せる場面となります。

つまり、ここでは、主人公は選択を間違えれば、死ぬかもしれない。

勝負に負ければ、命を失うかもしれない。

そういった場面となります。

 

 

千尋も同じです。

 

 

 

並べられた豚の中から一発で親を見つけないと、自由を失ってしまいます。

つまり、全てを失うことになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

物語の構成12:心の暗闇

 

心の暗闇とは、死の瞬間に対して主人公が心の暗闇の中で答えを模索する場面となります。

この場面では、主人公は、深く考え、心の奥底を探ります。

そして、自分や仲間を救うための最善策を考えます。

 

 

例えば、こんな感じ。

 

 

 

千尋は、目の前に並べられた豚を一瞥します

千尋は、一瞬の間を置いて、自分の心に問いかけます

 

 

 

 

このように、主人公は、この心の暗闇を通じて、状況を打破するための解決策を模索します。

 

 

 

 

 

 

物語の構成13:第二ターニング・ポイント

 

第二ターニング・ポイントとは、問題に対する解決策を見つける場面となります。

千尋は、心の暗闇の中で答えを見つけ出します。

そして、千尋は、並べられた豚を目の前にして、遂にこう断言します。

 

 

 

 おばあちゃんだめ、ここにはお父さんもお母さんもいないもん

 『千と千尋の神隠し』より引用

 

 

湯婆婆は、この千尋の答えに対して、このように問いかけます。

 

 

いない!?それがおまえの答えかい?

 『千と千尋の神隠し』より引用

 

 

千尋は、この最後の問いにハッキリと自信を持って、こう答えます。

 

 

 ………うん!

 『千と千尋の神隠し』より引用

 

 

 

このように、千尋は、第二ターニング・ポイントを通じて、解決策を見つけ出します。

そして、千尋たちは、遂に自由を獲得します。

 

 

 

 

 

 

物語の構成14:フィナーレ

 

フィナーレとは、全てのまとめとなる場面のことです。

教訓を学び、主人公の直すべき所が直り、勝利して終わります。

 

 

『千と千尋の神隠し』では、こんな感じになっています。

 

 

 

教訓:自立して行動することの大切さ

主人公の直すべき所:大人になるために必要な自立心・行動力がない

勝利:大人としての自立心・行動力を身に着けて現実世界へ帰る

 

 

 

こうして物語は収束します。

 

 

 

 

 

 

物語の構成15:ファイナルイメージ

 

ファイナルイメージとは、本物の変化が起きたことを見せる場面のことです。

最後のカットは、少しだけ成長して前より大人っぽくなった千尋の顔を映して終わります。

 

 

  

 

 

 

まとめ:『Save The Cat』から学ぶ物語の構成の仕方

 

長々と書いたので、最後にまとめです。

面白い物語を作るためには、以下15の要素があります。

 

 

 

 

 

~面白い物語を作るために必要となる15の要素~

  

物語の要素1:オープニング・イメージ

物語の要素2:テーマの提示

物語の要素3:セットアップ

物語の要素4:きっかけ

物語の要素5:悩みのとき

物語の要素6:第一ターニング・ポイント

物語の要素7:サブプロット

物語の要素8:お楽しみ

物語の要素9:ミッド・ポイント

物語の要素10:迫りくる悪い奴ら

物語の要素11:すべてを失って

物語の要素12:心の暗闇

物語の要素13:第二ターニング・ポイント

物語の要素14:フィナーレ

物語の要素15:ファイナルイメージ

 

 SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』より引用

 

 

 

 

覚えるのが難しい場合は、このページをお気に入りにでも入れて下さい。

そして、実際に物語を作る際に、参考にして貰えれば、と思います。

 

 

この法則を使えば、今まで以上に物語を作りやすくなるはずです!

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!