第17話 西暦1429年、百年戦争
あらすじ:朝霧は、ループを繰り返して、遂に盗賊から子供たちを救い出すことに成功する。
LANCASTER《ランカスター》とは
ある日、現代からタイムスリップした一人の男。
目が覚めると、そこは中世暗黒時代、百年戦争の地だった。
生きて再び現代に戻る条件はただ一つ。
あらゆる願いを叶える《奇蹟の円環》を手に入れる事ーー
生死を賭した中世ダークファンタジー剣戟譚、開幕!!
LANCASTER《ランカスター》第17話:西暦1429年、百年戦争
す、凄い……一瞬で盗賊の親玉を倒しちゃうなんて……
さすが、ランカスター隊長
そのランカスター隊長の動きに追随できる朝霧さんも凄いです……
見事な剣術だ。だが、騎士や剣士のそれではあるまい
朝霧、貴方は何処でその技を身に付けたのだ
まだガキだった頃、親のいない俺に手を差し伸べた組織があった
この《忍殺》の技術は、そこで身に付けた技だ
親のいない、か……
どうした
いや、何でもない
(悲しそうな目だ……それは俺に対する同情か?)
それよりランカスター。この世界についてお前に聞きたいことがある
この世界についてだと……? 奇妙な事を聞くのだな。まあ、よい
だが、その前に急いでここを離れよう。火が迫っている。話はその後だ
ああ
ようやく隣村のディーンに着いたわね!
隣村と言っても、結構歩きましたけどね。もうお日様があんなに……
ココットやローレンらは、しばらくここで休むといい
領主には話を通してある。村が復興するまでは面倒を見てくれるそうだ
ランカスター隊長。何から何まで本当にありがとう
どうやって感謝したらいいか……
気にするではない。悪意を砕き、正義を守るのが騎士の責務だ
朝霧もありがとね
ああ
ランカスター隊長……すみません
本当は薬草をお渡しする予定だったのに……
問題ない。ココットがこうして無事なだけでよい
待て。薬草ならここにある
『怪我人に使ってくれ』とココットから頼まれて預かったが、どうやら使わずに済んだらしい
そうか。ならば、その薬草、貰ってもよいか
は、はい。もちろん……
よく見たら、怪我をしているではないか。ほら、手を貸して
え、でも、私のために……
よいのだ。ほら早く
はい……
よし。これでよいのだ。数日もすれば、綺麗に治るだろう
ありがとうございます、ランカスター隊長!
では、私はそろそろウィンザー城に戻ろう
臆病そうな少女「え~。まだここにいてよ~ランカスターお姉ちゃん」
意地っ張りそうな少年「そうだよ! まだいいじゃんか!」
こらっ! ランカスター隊長を困らせないの!
隊長はお仕事で忙しいのよ
臆病そうな少女「は~い、じゃあね~ランカスターお姉ちゃん!」
意地っ張りそうな少年「ちぇっ、分かったよ! じゃあな、ランカスター隊長」
ああ、みんな元気でな!
それで朝霧。先程言っていた聞きたい事とは何なのだ
知りたいことがある
単刀直入に聞く。ここは一体どこで今はいつだ
ハハッ。何なのだ、その質問は。私をからかっているのか?
そんなつもりじゃない。本当に分からないんだ……
気づいたらこの場にいた
……
西暦1429年。イングランド王国《王都ロンドン郊外》──それが、私たちの今いる時間、場所だ
なっ……!? 嘘だ……
(そんな馬鹿げた話、信じられるか)
嘘などではない。私は決して虚言は言わない
(だが、確かに今まで見たことはそうとしか説明できない……)
(騎士、盗賊、瓦葺の家屋……どれも現代ではありえない真実味があった)
どうしたのだ。急に顔色が悪いではないか
だとしたらここは…………いや、間違いない……
──西暦1429年、百年戦争。その時代にタイムスリップしたというのか