概要:小説「LANCASTER《ランカスター》」第56話 明けない夜(13)
小説「LANCASTER《ランカスター》」あらすじ
その男、死ぬ度に、思い出す度に、強くなる──
ある日、現代からタイムスリップした一人の男。
目が覚めると、そこは中世暗黒時代、百年戦争の地だった。
生きて再び現代に戻る条件はただ一つ。
あらゆる願いを叶える《奇蹟の円環》を手に入れる事ーー
生死を賭した中世ダークファンタジー剣戟譚、開幕!!
不死のラーフ篇 第1話 運命との邂逅(1)
不死のラーフ篇 第56話 明けない夜(13)
ホークアイは、烏の顔を覗く。
「どうですか、お味は?」
「何度、食べても美味いな」
「おかしな言い方ですね」
くすりと笑うホークアイ。
烏は、首を傾げる。
「何がだ」
「いえ、何度もというほどは作っていないので」
「……」
「どうしました?」
「俺は今までホークアイの料理を何回食べた」
「どういう意味ですか……」
「答えてくれ」
「夕に一回、そして、今の一回です」
「そうか……」
まもなく夜が明ける。
烏が最期に見た光景。
それは、血だまりの中、駆け寄るホークアイの姿。
ホークアイは、懸命に烏の名を叫んだ。
その目からは、涙が溢れていた。
次話:不死のラーフ篇 第57話 明けない夜(14)
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