概要:小説「LANCASTER《ランカスター》」第108話 不死のラーフ(33)
小説「LANCASTER《ランカスター》」あらすじ
その男、死ぬ度に、思い出す度に、強くなる──
ある日、現代からタイムスリップした一人の男。
目が覚めると、そこは中世暗黒時代、百年戦争の地だった。
生きて再び現代に戻る条件はただ一つ。
あらゆる願いを叶える《奇蹟の円環》を手に入れる事ーー
生死を賭した中世ダークファンタジー剣戟譚、開幕!!
不死のラーフ篇 第1話 運命との邂逅(1)
不死のラーフ篇 第108話 不死のラーフ(33)
烏は、初めて、間近に王の顔を見つめる。
「思い出した……」
頭を抱える烏。
脳に電撃が走る。
幼き聡明な男児の顔を見て、走馬灯のように記憶が駆け巡る。
ある一つの目的のために、ひたすらにその暗殺の技術を磨いてきたこと。
ある一つの目的のために、情を捨て去り、人の心を失ったこと。
ある一つの目的のために、その日を待っていたこと。
烏は、刀の柄に手を掛け、幼き王を睨む。
「……ようやく思い出した。俺の使命は――」
「どうした」
「イングランド国王ヘンリー6世の暗殺」
「何を言っているのだ。変なやつだ」
跪く烏を見下ろすヘンリー6世。
まもなく宰相と共に部屋を後にする。
拝命二十四騎士長たちも続いて部屋を出ていく。
しかし、烏だけは、刀の柄に手を掛けたまま、その場に跪く。
「そうだ。俺はこの時のためだけに存在してきた……」
「深刻な顔をして、どうしたのだ?」
烏の顔を覗くランカスター。
次話:不死のラーフ篇 第109話 不死のラーフ(34)
▼電子書籍版