概要:『騎士の誓いの儀式・言葉』について一挙紹介!
ストーリーで学べる中世ヨーロッパ:騎士の叙任式 篇
ストーリーで学べる中世ヨーロッパとは
あなたは、ある日、現代から中世ヨーロッパにタイムスリップしてしまう。
あなたの目的は、再び現代に帰ること。
あなたは、知識を身に付けながら過酷な中世ヨーロッパを生き抜く決心をする。
あなたは、農村の片隅にて、騎士様に気になっていた事について尋ねる。
騎士とは、どうやってなるのかと。
マルグリッド・オブ・ランカスター
面白い事を訊くのだな。少し話が長くなるが良いか?
あなたは、静かに頷く。
ストーリーで学べる中世ヨーロッパ 全エピソード一覧
【中世ヨーロッパ】騎士の誓いの儀式・言葉について
騎士になるためには、主君から叙任を受ける必要がありました。
叙任の儀式は、以下の通り行われました。
騎士となる者は主君の前にて跪いて頭を垂れる
主君は長剣の平を以て騎士となる者の肩を叩く
こうした儀式を経て、正式に騎士として認められるようになります。
実際の騎士の叙任式は、以下の通りです。
エリザベス女王による騎士の叙任式
マルグリッド・オブ・ランカスター
私はこうしてデイム(Dame)の称号を与えられたという訳だ
尚、儀式の際に誓いの言葉があったかどうかは定かではないです。
映画における騎士の叙任式
映画では、しばしば、演出として「忠誠、公正、勇気、武勇、慈愛、寛容、礼節、奉仕」などの騎士道を口にすることがあります。
個人的には、漫画・小説・映画にて「叙任の儀式」を描きたい場合は、誓いの言葉があった方が雰囲気を出せるかなと思います。
【中世ヨーロッパ】騎士がマントを身につける理由
騎士がマントを付ける理由①:環境の影響を遮断するため
金属鎧は、寒い場所では、とてつもなく冷たくなります。
一方、暑い場所では、太陽光を吸収して高温になります。
それだけではありません。
長い旅路の間、雨風に晒され続ければ、錆びる可能性もあります。
こうした外部的影響を避けるために、マントを身に着けていました。
騎士がマントを付ける理由②:防護としての役割
金属鎧とはいえ、槌による直撃を受ければ、ダメージを受けてしまいます。
マントにより、外形をぼやかしたり、絡めとったりすることで、ダメージの軽減を図っていたようです。
16世紀の一部書物では、騎士のマントは盾として描かれていました。
マルグリッド・オブ・ランカスター
マントは個人を証明するための紋章を入れるのにも役立っているのだ
尚、中世ヨーロッパの武器防具のイラストの描き方について学びたい方は、以下書籍がマジで役に立ちます。
▼本書の特徴
・西洋の甲冑の構造について分解して図解してくれている
・西洋の甲冑のイラストの描き方について学べる
【中世ヨーロッパ】騎士っぽいセリフについて
映画などでよく見られる騎士は、しばしば、騎士道に基づいた騎士像から描かれています。
騎士道では、以下の徳が説かれていました。
- 忠誠、公正、勇気、武勇、慈愛、寛容、礼節、奉仕
騎士を描きたい場合は、徳を大切する者として描けば、雰囲気は出せるかと思います。
【中世ヨーロッパ】騎士の名乗りについて
映画では、しばしば、騎士の決闘は名乗りを上げてから行われます。
由縁としては、騎士道の教えに「公正であるべき」とあるためだと思われます。
実際に名乗りを上げていたかどうかは、定かではないです。
マルグリッド・オブ・ランカスター
名乗らぬは、騎士の恥だ
【中世ヨーロッパ】騎士と騎兵と戦士の違いについて
騎士とは、あくまで主君から叙任された者のことです。
騎士は、馬に乗らなくても騎士です
一方、騎兵とは、主に馬に騎乗して戦闘行動を取る兵士のことです。
また、戦士とは、戦場で戦う兵士のことです。
【中世ヨーロッパ】騎士が弓を使うのは卑怯だった!?
騎士の十戒の中には、「初めに弓引く者に不幸あれ。かの者は肉弾戦に能わぬ臆病者なのだ」とされていました。
マルグリッド・オブ・ランカスター
弓兵と言えば、彼女は元気にしているだろうか
尚、弓について学びたい方は、以下記事を見てください。
【中世ヨーロッパ】騎士・貴族の挨拶(お辞儀)
中世ヨーロッパを舞台とした映画では、しばしば、紳士が胸に手を当てて挨拶をしたり、淑女がスカートの端をつまみあげて挨拶したり等することがあります。
これらの挨拶を、何というかご存知でしょうか?
男性の挨拶:bow and scrape(ボウアンドスクレープ)
女性の挨拶:curtsey(カーテシー)
これらの挨拶は、貴族社会にて、目上の人に対して行われていたようです。
起源については、よく分かりません。
ただ、1600年頃の西欧の書物には、ボウアンドスクレープをする男性の絵が描かれていました。
尚、当時の人々の暮らしを勉強するのであれば、以下2冊でOKです。
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ストーリーサイド
あなたは、騎士様に教わった通り、ボウアンドスクレープをしてみる。
しかし、残念。
彼女の目には、滑稽に見えたようだ。
マルグリッド・オブ・ランカスター
見なかったことにしておこう
【中世ヨーロッパ】片側にだけマントを付ける着方
軍人が右肩にだけマントを着ている姿を見たことないでしょうか?
片方の肩にだけ羽織るマントの正式名称は、ペリースと言います。
ペリースは、15世紀頃のハンガリーの騎兵が着用していたものとなります。
漫画では、中世ヨーロッパの騎士がまれにペリースを着用していることがあるけれど、実際にはなかっただろうと思います。
【中世ヨーロッパ】騎士の名前はどんな名前が多かった?
イギリス・フランス辺りでは、12世紀頃より、職業に由来する名前が使われていました。
多い名前としては、Smith(読み:スミス。意味:鍛冶屋)がありました。
そのほかの苗字としては、以下の通りです。
Baker(ベイカー):パン屋
Butler(バトラー):執事
Carpenter(カーペンター):大工
尚、騎士については、有力な貴族階級が多いため、名前に領地の名を冠することがありました。
具体的な貴族の名前について気になる方は、以下記事を見てみてください。
【中世ヨーロッパ】騎士の年収は720シリング、弓兵の年収は144シリング程度
カリフォルニア大学デービス校によって発表されたレポート「中世の価格」によれば、騎士の年収は以下の通りとなります。
- 騎士の年収:720シリング
- 見習い騎士の年収:360シリング
※1316年頃のレートにて換算
尚、レポートでは、「1シリングが日本円レートにしていくらになるのか」については換算できないと書かれていました。
当時は2羽の鶏の値段が1ペンス程度とのこと
12ペンスは、1シリングと書かれていました。
つまり、騎士の年収は、17,280羽の鶏を購入できるほど余裕があったみたいです。
尚、弓兵の年収は、144シリングと書かれていました(=3456羽の鶏を購入できる程度)。
当時の労働者の年収は40シリング(=960羽の鶏を購入できる程度)
騎士の年収がいかに高給だったかが分かります。
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ストーリーサイド
あなたは、騎士様の装備を見つめつつ、なるほどと頷く。
腰に携えた長剣、銀の胸当て、鉄靴。
確かに、騎士様の装備は、どれも高価そうだった。
マルグリッド・オブ・ランカスター
ジロジロ見るではない。何用だ
【中世ヨーロッパ】馬に乗らなくても騎士は騎士
ファンタジー作品に登場する騎士は、しばしば、馬に乗って登場します。
そのため、騎士とは、馬に乗って戦う人のことだと思われる方もいるかと思います。
しかし、実際には、騎士とは、あくまで叙任された者のことを指します。
馬に乗っていない者であっても、騎士と呼ばれます。
【中世ヨーロッパ】騎士にはエスクワイアと呼ばれる従者が付き従った
エスクワイアとは、日本語でいえば、見習い騎士のことです。
騎士になる前に、ひとりの騎士に付き従って、騎士の勉強をする期間となります。
エスクワイアは、騎士様の身の回りの世話はもちろん、騎士様の盾・甲冑を担いで、戦場に出るといったことをしました。
そのため、「盾持ち」と呼ばれることもありました。
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ストーリーサイド
騎士様に世話ばかりになっているあなたは、ある申し出をすることにした。
マルグリッド・オブ・ランカスター
私の側で見習い騎士(エスクワイア)として働きたいだと……危険が伴うぞ?
あなたは、覚悟を決めて、頷く。
【中世ヨーロッパ】女性の騎士も実在した
騎士といえば、男性のイメージがあるかと思います。
しかし、実際には、歴史上において、女性の騎士も実在しました。
例えば、実在した女性騎士としては、1395年にアグネス・ホトと呼ばれるイングランド人の女性騎士がいました。
アグネス・ホトは馬上槍試合において男性に勝利した
そのほかの例としては、1381年にブルターニュ公ジャン5世が創設したアーミン騎士団のメンバーの中には、女性騎士がいたとされています。
尚、女性騎士の勲章は、デイムと呼ばれました。※男性はナイト
マルグリッド・オブ・ランカスター
私も其の数少ない女騎士の一人だ
【中世ヨーロッパ】騎士の時代の終わりは15世紀末~16世紀
戦場における騎士の役割は、15世紀末~16世紀頃には、大して重要ではなくなっていきました。
なぜなら、剣よりも破壊力がある砲台・鉄砲が現れたためです。
【中世ヨーロッパ】騎士の訓練はどんな感じだったのか?
見習い騎士の場合は、付き従っている騎士に剣の稽古などをつけて貰っていました。
一方、騎士については、剣の稽古はもちろん、甲冑を纏って戦える強靭な肉体作りをしていました。
騎士であるジャン2世・ル・マングル(1366-1421)の書物によれば、騎士の訓練として、「城壁をよじ昇る」「岩を持ち上げ投げる」といったものがありました。
マルグリッド・オブ・ランカスター
私の場合は、剣の鍛錬に心血を捧げている
【中世ヨーロッパ】騎士の言葉遣いは基本的には丁寧だった
騎士は、領主・貴族とも親交がありました。
そのため、権力者・貴族たちの前でも恥ずかしくないような教養と言語を身に付けていました。
【中世ヨーロッパ】騎士の尊称は「sir(サー)」だった
騎士の尊称としては、「sir(サー)」が使われていました。
13世紀頃の書物には、騎士に対してsir(サー)が使用されていました。
【中世ヨーロッパ】騎士の服装の名称・呼び方について
一般的な騎士の服装は、以下の通りです。
- サーコート:チェインメイル(鎖かたびら)の上に着る服のことです。十字軍のサーコートには、赤い十字架が描かれていました
- チェインメイル:矢傷、刀剣による裂傷を防ぐための防具のことです。指輪のような輪状の鉄が幾重にも織り込まれたものとなります
- ベルト:ベルトには、剣を吊るしたり、水筒を吊るしたり等をしていました
- プレートアーマー:一般的には、騎馬に乗り込みながら敵陣に突進する際には、プレートアーマーのように防護性の高い防具が使用されました
- ソールレット:鉄靴のことです。鉄靴のため、戦場にて馬に踏まれたとしても、足の骨が折れることはなかったようです
尚、中世ヨーロッパの兵士の服装について描きたいと思っている方は、下記資料を読んでみてください。
当時の装備が図解で分かりやすく説明されています。
【中世ヨーロッパ】騎士が手袋を付けていた意味とは
騎士は、しばしば手袋を携行していました。
理由としては、以下の事由が挙げられるかと思います。
- いつでも剣を握れるようにするため
- 馬の手綱を握れるようにするため
- 時には決闘を申し込むため
【中世ヨーロッパ】騎士は学校または大学に行っていたのか?
ファンタジー作品では、しばしば、騎士見習いが学校に行く描写があるかと思います。
しかし、実際には、先ほど説明した通り、騎士見習い(エスクワイア)は、ひとりの騎士に付き従って、騎士の勉強を行いました。
そのため、騎士になるために、騎士専門の学校に行くということはありませんでした。
【中世ヨーロッパ】騎士は盾を装備していたのか?
騎士と言えば、剣のイメージが強いと思います。
しかし、実際には、盾も使用していました。
例えば、テンプル騎士団の騎士は、馬に乗りながらカイトシールドと呼ばれる盾を使用していました。
また、エスクワイア(見習い騎士)が主人の盾を運ぶこともありました。
尚、実在する盾の種類については、以下記事を見てください。
ストーリーで学べる中世ヨーロッパ:騎士の叙任式 篇 -完-
あなたは、騎士様と初めて会った時より、少しだけ彼女の事について知ることができた。
何より、見習い騎士(エスクワイア)として働けることになった。
あなたは、これで収入を得ることができるようになった。
次話:火に魅せられて